フィボナッチ、ハイゼンベルク、リーマン、シュレーディンガー・・・長い名前の学者たちの戯言
幼い僕らを悩ませるモンティホールな自己満足の数式たち
数で説明できるこの世界の全てを解き明かしたら答えは1つのなのかい?
あぁヲタクの皆様、僕らまで巻き込まないで
理論なんかで世界を分かりたくないんだ、マルコフの夢だけじゃ終わらないくらいにね




NUMBERS&DREMARS




寝坊したい土曜日の昼下がり、紫の艶のいいさらさらとした髪をもつ少年は大きくため息をついた。



「だーかーら、何でこんなカレカノ方程式が解けないのさ!!」
「わかんねーもんはわかんねーんだからしょうがねぇじゃん」
開き直った堂々とした口ぶりの二色髪の外道と称えられている僕の親友。
「あぁ、こう掛けるんじゃんなくて、こっちとこっちなんだよ」
「え?あ〜もう一回、早すぎんぞフラグ説明!!」
熱心に聞いているかどうかさえわからない中華料理屋の息子である僕の親友。
勉強する気あるの?テストまでもう1週間もないんだよ!とありきたりな言葉で責めても効果なし。
今回のこの勉強会だって誘ったのは僕だ、開口一番「断る」と言った奴もいたけど・・・。
そこは上手く言いくるめて呼び出した、普通は「出来ないから助けてくれ」と言ってくるべきだろ?
夏休みや普段の宿題の時だけは、神を拝むかのようにやってくる都合よさ。
たまにしっかり勉強したかと思えば、ロイドさんなんかに聞くから適当な覚え方をしてくるし。
特に気にしていないようだから、僕も大して触れなかったのに・・・エゴイストに触れた。


始まりは昨日の昼休み、好きでもないクラス担任からふと声をかけられた。
「松岡、お前あいつらの親友だろう、少しは勉強でも見てやってくれないか」
はぁ・・・としか答える事が出来なかった廊下でのセンセの一言。
受験生としてあいつらは自覚があるのかとか、テストはもうすぐだとか、そんな余分な話。
勿論僕は違う、苦手な科目もあるがたいてい上位組だ、自慢じゃないけど。
少しぐらい僕のことを褒めていっても罰など当たらないのに、と気の利かなさに不満を漏らす。
センセがいくら心配したって、リュウセイ君はあくまでボーグで生きていくって無謀なこと言ってるし。
ケンだって、店を継げればいいなんて言い出した・・・目標高く持ちなよ二人とも。
そう・・・僕たちももうそんな歳になった、小学生の時より厳しくなった学校生活、制服、部活。
あの頃の服が窮屈なほどに伸びた身長、声変わり、交友関係・・・変わらないのはボーグ、だけ?


まつげをふせるように、ぽつりと呟くのはあくまで独り言


中学は、リュウセイ君やケンとは離れて私立の中学に行こうと考えていた時期もあった。
否、何もなければ僕は確実に進んでいたと思う、家族も願っていたはずだ。
問題にされたのは、私立の中学に通うには今より登校時間が長くなり僕の身体への負担が大きくなるということ。
あの時期、夏休みの事件やダークビックプロジェクトなんかで酷使しすぎていたんだと思う。
気づけば大事な時期に僕は病院生活を余儀なくされた・・・思いきり枕をこぶしで叩いた時の痛み・・・。
あ、しんみりさせちゃったね!これ以上は又、何かの時に語れたらいいな。


目前で現実逃避しそうになる彼らに現実逃避


「別に数学でいい点とらなくたって、世の中生きていけんだろ!」
「はいはい・・・数学、だけならいいけどね」
加減乗除が出来ればいいって?それすらろくに出来ないくせに。
何で、塾を経営している親父さんがいながら鶴亀算なんてやるのかと思ったよ、あの頃・・・。
「数学なんて、テスト範囲を1週間しっかりやれば馬鹿でも点がとれる科目じゃないか」
「1週間もやるくらいなら、馬鹿でいい」
「おっれも〜♪」同意する声とテンションの高いハイタッチ・・・はぁ、教えてる僕が馬鹿らしく思えてくる。
え、僕の勉強方法?復習はするけど、大体は学校の授業を聞いてれば理解できるし、得意科目なんだよね。
様々な数字の配列が並び、記号で導き出すのはたった一つの答えだけ。
誰かの理解しがたい感情を考えたり、死んだヒトの偉業を覚えることも、反応の可能性を考えることもない。
どうして苦手なヒトが多いんだろう?かなんて僕がいえないけれど。
そして二人のプリントには赤いチェックだけがつけられていく、僕の赤ペンを買いなおしてもらいたいぐらいに。
「リュウセイ君のお兄さんだってリンリンちゃんだって勉強できるんだから、少しは見習ったら?」
「うっせ、兄貴と一緒にすんな!!どーせ兄貴はさ・・・大学でさ・・・あ”ぁぁ・・・」
ごめん、まだ気にしてたんだねあのこと・・・大丈夫だよ、多分、きっと、maybe、ソウソウ。
「そうなんだよ!!リンリンはホントよく出来た妹でさ〜この前もクラスで1番でさ〜最近一段とかわいくてさ〜・・・」
デレデレと語り始めるシスコン、確かに前からしっかりしてたしかわいくなったと思うけど、兄としてどうなの?


勉強の苦手な者は脱線するのが上手い、まんまと罠にはまらぬよう気をつけて。
「そんなこともあろうかと、俺はこれを手に入れた!!見ろよ!」
ぐちゃぐちゃのカバンにリュウセイ君はさっと手をいれると、やっと取り出したのは・・・電卓?
よくそのカバンから出せたなぁと片隅で思いつつ、随分ボタンと文字が多いソレを見つめる。
「それって・・・もしかして関数電卓!?」
「すっげぇだろ、分数も図形も微分だかってのもできちゃうんだぜ!!」
又そんなもの手に入れて・・・その使い方が覚えられるなら公式3つぐらい覚えられるだろ?
むしろ、持込可のテストなんてないし、あっても電卓は絶対に無理だと思うけどね。
興味津々のケン、きっとあの親父さんのことだから大して使い方など教えてないに違いない。
「勝治、√514797309は?」
「22687.16177・・・」
聴覚から反応よく神経に一気に電流を流し脳に働けと促す。
「じゃあ√3126422158121621」
「55914418.16・・・」
しれっと出した答えに、電卓の数字と僕の口頭を記した紙を見比べて顔を歪ませる二人。
「気持ち悪いな、お前・・・」おまけに「相変わらず」の一言。
バチバチッツ!!
「ごめん、もう一回言ってくれるかな?」
不満と怒りいう名のスパークがスタンガンのようにボーグから飛び散る。
僕のボーグの餌食になりたくないんだったらそういう発言は自重、してくれないかな?
センセに頼まれたから内申点上がりそうだから特別に丁寧に見てあげてるのに・・・!!
「「ひいぃぃぃ!!」」と二人の身体が恐怖でひきつる音、今にも土下座して誤りそうな雰囲気。


運よく聞こえたのは聞きなれたノック音


「勝治さん、おやつでもと思ったのだけど今いいかしら?」
ありがとう母さん、空気を読んでくれたおかげで僕は部屋を壊さずに済みそうだよ。
ドアをあけ、バランス感を要するトレイを受け取る、母さんは巻き込めないからね。
いいんだよ「頑張ってね」とか「よかったらお夕飯も」なんて言葉かけなくても・・・母さんは優しいんだから。
氷の入ったグラスに紅茶、生地に特徴があるシュー、二層のクリームの間のストロベリー。
濃いダージリンの底でミルクと茶葉のもやがゆっくりと渦を描く。
頭の中で反復する言葉・・・気を取り直して始めなければ!と、グラスの中身をぐびっと飲み干す。
「さぁ、始めるよ!ところで君たちは因数分解ってわかる?わかるわけないよね?じゃあ説明するから」
「おい、ちょっと待てよまだシュークリームが!!」
「なんなんだよ、いきなり、のーふぉだふふぁら・・・むぐむぐ」
一口で口にいれるとか、ほら、たれる!!僕のノートじゃなきゃいいけど、ほら聞いて、休憩はなし!
とりあえず基礎からだ、1年の因数分解からやらされるわけないと思っていたけど。
まさかここまで出来ないなんて・・・どこで点を取ってたのか聞きたいぐらいだよとシャープペンで小突く。
あーでもない、こーでもない、基礎が出来ても応用になると解けやしない。
げんなりさせる位に公式を復唱させ、書かせ、解かせる、手の脇がこれでもかと黒くなるくらいに。
ヒトに教える方が自分の勉強になるというけど・・・ホントだろうね?


見ているだけの教科書は、勉強したとは言わない


そしてあっという間に時間が過ぎるテスト前・・・テスト期間・・・テスト後。
あれから何回か勉強会は開いたつもりだけど、僕の勉強の時間を削ってあげてね。
これで赤点なんて取ったら・・・僕の点が下がったら・・・今度こそエレクトリカルの刑にするしかない。
「リュウセイ君、で、何点だったのかな〜?」
威圧をかけるような満面の笑みで、今しがた答案を返されたリュウセイ君に問う。
ん!と渡された答案用紙は『33』どや顔する程でもないだろう・・・でも赤点じゃない、一安心した。
「ふおお、すげぇ!!」
残るもう一人の声が前から聞こえ凄い勢いで近寄ってくる。
やれば出来る子っているんだよね・・・思いもよらないところに。
「なぁなぁ、リュウセイ、勝治これ見てくれよ!おれってば凄くないか?」
後にしてよ、連続で8点とったとか答案用紙に三角しかないなんてそんなくだらなっ・・・Σえ”えぇ!!
眼前につきつけられた紙の右上に並ぶ赤い数字は・・・「62」。
俺がちょっと真面目にやればこれぐらい、という結論にまでたどり着かないケンの思考回路。
開口一番は、教室中に響いたリュウセイ君の「う、裏切り者おぉ!!」発言。
「ちょっ、ちょっとコレどーいうことなの!!カンニング?不正?絶対に採点ミスじゃないの?又はケンの偽物?」
「お前失礼な奴だな、相変わらず・・・」
驚きが隠せない、鳩が豆鉄砲どころじゃない、これって僕の才能じゃないかな・・・?
「だって、僕せいぜい40点が取れるような勉強しか教えてないのに!!」
「「・・・おい、ちょっと待て」」
あ、ごめん!驚きすぎてつい本音が・・・その怒気怖いよ、あ、あはっ。


どんな理論でも説明できない生活から抜け出せないストレイシープ


つけ加えるなら、僕はやっぱり今の生活が楽しくてしょうがない。
そりゃ、親友を金で売るような彼らにあれからも散々振り回されたけど、否ホントに・・・かなり。
小学生の頃はできなかったことをして、海外旅行も楽しめたし・・・あ、間違えた世界大会だったね。
成長して僕の心臓もこの異次元のような生活に順応してきたような気がする。
エベレストバトルの時は、うn、ほら心臓がさ、海峡越えの時も確か心臓が・・・気にしたら負けだよ。
H∞制御理論が使える生活さ、ロバスト性を最大限に使ったいいかげんさ。
簡単に言えばカオス理論、数学のように決まった公式など存在しない生活。


「よぉし、じゃあお前らおれの一週間の昼飯奢れよな!!中華以外で」
「「なんでだよ!!」」
「って、僕が教えてあげてそんな点取れたんだから、僕に奢るのが普通でしょ?3倍返しくらいで」
「ホワイトデーか!!いやいや、お前らいい点なんだから傷心を労わって俺に何か奢れ」
「意味わかんねぇよ!!酢豚にパインが入ってることぐらいわかんねぇよ!!」
「そうだよ、リュウセイ君はそんなので痛む心なんてないじゃないか!うわ〜酢豚のくだり久々に聞いたよ」
ここはやっぱり・・・アレできめとく?3人で顔を合わせにか〜っと笑う。


後悔?ないと言ったら・・・否、ないかな。
だってほら、僕らはいつでもこうやって笑いあってるふざけあえる。
とりあえず僕に心から最大級のお礼を言ってね。
多少の発言はアイスで許してあげる、ちなみにハーゲンのクレープのやつ。
最後にひとつ、僕の点数?98だけど何か?そう(−)のつけ忘れ、よくあるよね。
待って、始まっちゃうよ・・・チャージイン!!


来年、きっと僕らは高校生になる







あとがき
お待たせして申し訳ありません!!あえて勝治独白にしてみましたw
無駄に長い、と感じさせてしまったら申し訳ありません。ブラコンマザコンシスコン♪
テンションを楽しめにしようと思うと会話文で続いてしまったり腹黒かったりですが・・・。
「数学」・・・理系のくせにリュウセイちゃまレベルな管理人です(笑)
苦手というかやらないだけというか、なので出来ない彼らの気持ちは激しくわかりますww
図形の問題にしようと思っていたら、図形の説明から必要なので断念(同理由で関数も)
本当は本編の『熱暴走』のように暴れる話にしようと思ったのですが・・・最近使いすぎなので自粛。
学年とか設定とかいろいろ考えて、ただ勉強してるだけもあれだなと思ったらシリアスに・・・。
和気藹々と勉強してるターンが短くなってしまいましたが、よろしければもらってやってください!!
これからもよろしくお願いします、リクありがとうございました!
リクエストおkだったので思わずリクしてしまいました。麝香様のサイト
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